草屋形石燈籠

草屋形石燈籠(くさやかたとうろう)は、日本庭園に設置される石燈籠の中でも、特にその笠(屋根部)の形状に特徴をもつ形式である。笠は「草葺き屋根」を模したもので、茅葺屋根特有のふくらみと柔らかな曲線を持ち、頂部にはわずかに丸みが見られる。この造形により、全体として温かみのある印象を醸し出している。火袋(ひぶくろ)は、中央に灯をともす部分であり、多くの場合、格子窓や透かし彫りが施されており、装飾性と実用性を兼ね備えた意匠となっている。草屋形燈籠はその素朴な美しさから、自然風の庭園や茶庭において好んで用いられる。茅葺屋根が日本の里山や古民家を想起させることから、どこか懐かしく、やさしい風情を庭全体にもたらす存在である。本燈籠は、濵元家に設置されていた数ある石燈籠の中で、唯一花崗岩製ではない点において特筆すべきものである。石種は明確には断定できないが、地元・富山県産、またはその近郊で産出される凝灰岩が用いられていると考えられる。笠と火袋の接合部には機械による切削の痕跡が見受けられるが、その後、表面を丁寧に叩く加工が施されており、切削跡を目立たせないよう配慮された仕上がりとなっている。製作年代については確定できないものの、濵元家の歴史的背景を踏まえるに、昭和20年以降、すなわち戦後に設置されたものである可能性が高い。この燈籠は、素材や加工の点においても特徴的であり、庭の景観に穏やかな趣を添える存在として、静かに佇んでいる。

 (京都北山都乾園 2025年4月13日)




 

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